The
collection of short essays by Our President (Masaaki Okada)
「東京上野にて」
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外食しながら回りのお客を見ているといろんな食べ方があるので面
白い。
先日出張の時、上野駅近くの吉野家で焼き魚(鮭)定食の朝食を食べていた。
左の席に20才位の若い男性が座った。注文した牛鮭定食大盛り、生たまご、
牛皿の量にびっくりしながら悪いとは思いつつ彼の食べっぷりに見とれてしまってい
た。
実に豪快で気持ちが良い。こっちは鮭をちょこちょこっと少なめな骨を外しながら箸
を動かしていたんだけど、なんと彼は大盛りの御飯を大量に口に入れるや、鮭を半分
箸で切って骨も皮もまったく気にする様子もなくその一杯にふくらんだ口に押し込ん
だ。その口をまだ動かしながら、今度は定食についている牛皿を別
に注文した牛皿に あけ、生たまごをその上に割り、箸で素早くかき回すなりご飯の上に
全部かけてしまった。そしてさっきの残り半分の鮭を口に入れるやご飯どんぶりを口
につけ、いっきに 牛丼状態のご飯を流しこんでしまった。1〜2分で彼の食事は終わった。もはや行儀
がどうのこうのというよりとにかく見事だ。ちょこちょこ食べているこっちはどうも
変に恥ずかしい気がした。
今度は「ご飯、もう一つ!」という向かいのカウンターにいる中年男性の声に目を
むけた。たしかこれで3杯目のはずだ、すごい。朝からよくそんなに食べられるもの
だと感心しながら見ていると出された3杯目のご飯に納豆のパックを開けてか
けようとしていた。え!?じゃいままでの2杯のご飯はなにをおかずにしてたんだろ
うと、彼の納豆定食のお膳をのぞいたら味噌汁と小さなお新香の皿が空になっていた。
すごい、よっぽど吉野家のご飯がうまいんだろうか、なんて思いながら彼の口元にふ
と 目をもどすと、な、なんと納豆のパックの蓋を舌でなめているではないか!。4杯目
にいくのかどうかわからないけど、唖然としてしまった。これもまたすごいもんだっ
た。
そんな回りに気をとられながらもこっちの食事がそろそろ終わりかけた頃、ふと視
線を感じ、顔をあげると納豆の彼の右の方で食事をしていた白髪のおばあちゃんがじ
〜っとこっちを見つめていた。うわ〜!!見られていたんだ。
2001.1.17.朝 |