The collection of short essays by Our President (Masaaki Okada)

- 2004.02.29 UP -

「初めての経験、東北本線野辺地駅にて」

 乗客達は皆、ホームに降りずに跨線橋で強風と寒さをしのいでいた。構内アナウン スが17:16発特急列車「つがる26号」が野辺地駅に近付いていることを告げた。跨線 橋の窓から「つがる26号」のヘッドライトが近付いてくるのが見えた。乗客達は階段 をホームに下りて行き、自分の指定席のある車両の停車位置へ並びはじめた。ホーム は寒く風が強い。さっきまで一人もいなかったホームが急に賑やかになったが皆、無 言で駅に近付いてくる特急を見つめている。冬の夕暮れに特急のヘッドライトがまぶ しい、そしてその光りが次第に大きく輝いてきた。
「ウワ〜!なんだ!」、「どうしたんだ!」、「アレレレ?!」。
 手に荷物を持ち始めて指定車両が自分の前に停まるのを待っていた客達の目の前を 「つがる26号」がなんと猛スピードで走り抜けていくではないか。そんなバカな。一 瞬、唖然としていた客達が騒ぎ始めた。目の前を行き過ぎた「つがる26号」は最後尾 の車両を半分ほどホームに残して急停止していた。
 駅事務所から駅員があわてて飛び出してきた。そりゃあそうだ。野辺地駅の駅員に したって客達と同じ気持ちだ。客達も追いかけるように行き過ぎた特急列車のほうに 向って動き始めた。「特急列車がバックして指定位置にもどります。お客様は指定の 場所でお待ち下さい」というアナウンスに客達がぞろぞろともとの位置へ戻り始めた。
 7分の遅れを乗車した「つがる26号」の車掌アナウンスが告げた。何かの原因で滑 走したとも説明していた。新幹線の場合だったらこんなことで済まないだろうな、大 ニュースだったろうななどと思いながら、JRでの出張が多いのに今日のような経験は 初めてなので少し興奮している自分にくらべ他の乗客達は何ごともなかったように静 かなのに不思議さを感じた。
 しかし猛スピードで走り抜けて行く特急列車を数十センチの目の前にした時は本当 にびっくりした。在来ローカル線ならではいつもあるアクシデントなのかな。うん、 そうかも知れない。翌日の新聞にもTVニュースにもでてはいなかったからな。

(update 2004.2.29)



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