The collection of short essays by Our President (Masaaki Okada)


「笑う警察官」


「検問よ。」と助手席の妻が運転席の私に声をかけた。警察官の合図で車を止めると彼女は助手席の窓を開けた。

「すいません。免許証を拝見します。」懐中電灯を持った若い警察官が軽く敬礼をし、車内をのぞきこむようにしながら言った。私がポケットから免許証を出
そうとしていると、

「はい!免許証。ご苦労様です。」という彼女の声。

「エ!?」と思って助手席を見ると彼女は自分の免許証をだして警察官に見せてい るではないか。

「ハッハハ。ムフフフ。あのですね。運転手さんの免許証を拝見したいんですよ。」警察官が笑っている。私も笑った。するとその警察官にむかって「だって、あなた私の目を見て免許証と言うもんだから。」と少しムカッとしながら言った。そして「あなたのだって。私のじゃないんだって!」と私に。

「検問で助手席の免許証見たってしょうがないよ。運転手のに決まっているじゃないか。」検問を抜けた車の中で言った。しかし彼女は 「でも絶対、あの警察官、私に免許証を見せてと言ったんだからね。」と言い続ける のだった。

                               

 (2001.7.18) 



copyright @2001 Okada Design Office all rights reserved.