The collection of short essays by Our President (Masaaki Okada)


「衛生優先の回転すし屋にて」

 先週の夜、洋子さんと市内桧町にあるチェーンショップの回転すし屋へ行った。お 客はまずまずの入りだったが、幸いカウンター席は空いていた。
 しかし店内に入るなり塩素の臭いが鼻をついた。すごい臭いだ。これは学校のプー ルの臭いだ。「すごいねこの臭い。気になるならこの店出ようか?」「でも折角来た のだから。それに厨房で消毒か漂泊してるのだろうからその内に臭いも消えるだろう 。」などと言いながら、目の前を流れる鮨を食べはじめた。しかし、一向に臭いは消 えない。

「ちょっとすいません。この店、塩素の臭いがすごくない?」
と店の人に注意をし てしまった。

「そうですか?」
とちょっと怪訝そうな返事。

「え?この臭い貴女達気にならないの ?」 というこっちの驚きの言葉を背にパントリーの方へ何か言いに行ってしまった。 再び鮨をつまみ始めたのだがどうしても塩素の臭いが気になってしょうがない。その 上、お客さんが出入りするたびドアーが開くのだがその時新しい空気が店内を流れる のと同時にその臭いはさらに強くなる。

 鮨の臭いなんか全然しない。カウンターの中で握っている従業員すらこの臭いが気 になってないようだ。お店の従業員もお客も若い人ばかりだった。この塩素の臭いが 気になるのは私達だけかも知れない。若い連中は塩素の臭いにず〜と慣れてきてしま っているのかも知れないね、なんて二人で話しながらその店を早々に出ることにした 。

 二人で千円にもなるかならない代金を洋子さんが支払っているそばで「塩素臭くて たまらないので気を付けた方が良いよ。気になってゆっくり食べていられなかったよ 。」と私が従業員に注意するとレジの手を一瞬止め、「あの〜、それは・・・。」と 嫌がらせを言われているような不安な顔をした。支払いの時、そんな状況はこっちと しても誤解されそうなので「いやいや、いいよ、いいよ。もう。」と言ってしまった。

 帰り際にふと店内の壁を見ると”当店は衛生に充分気を付けています。”というよ うな内容のPOPが貼られてあった。ここは鮨の味より衛生優先の店なの?味と臭いは どうでもいいの?  

 でも安い値段のチェーンの回転すし屋へ行ったのだから我慢しなきゃいけないのは こっちの方だったのかななんて思いながらも無性に鶴岡の回転すし「金太郎寿司」へ 行きたくなった日だった。
                                (2001.5.27)



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